総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- フォロー 世界で増える感染症 背景に地球温暖化と「蚊の広がり」 谷口恭・谷口医院院長 2023年1月2日 保存保存 文字 印刷 亀裂の入った巨大な氷山,一角が崩れ落ちると大きな波しぶきが発生する=グリーンランド西部イルリサットで2019年9月25日,賀有勇撮影 岸田文雄首相が突然参加をキャンセルしたことが原因なのか,11月6日から18日までエジプトのシャルムエルシェイクで開催されたCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)に関する報道は,日本のメディアでは目立ちませんでした,これは私の印象ですが,欧米諸国に比べると,日本では地球温暖化への関心がさほど高くないように思われます,しかし,地球温暖化がこのまま進行すれば地球滅亡までの時間が短くなるのは確実で,すでにその兆候とも呼べるべき現象が起こっています,熱中症,台風(ハリケーン,サイクロン),洪水などはその代表ですが,現在,日本海沿岸地域で被害者が相次いでいる大雪も,地球温暖化が原因と言われています,そして,我々医師は,蚊による死亡者が増えることを懸念しています, 過去のコラム「世界で最も恐ろしい生物とは?」で紹介したように,世界で最も恐ろしい生物は蚊です,そのコラムでは,ビル・ゲイツ氏が自身のブログに載せている「世界で最もヒトを殺している生物のランキング」を紹介しました,第4位はイヌ(狂犬病を媒介するから),第3位はヘビ,第2位はヒト(言うまでもなく戦争が元凶です),そして第1位が蚊です,ゲイツ氏によると
ブランド通販 蚊は年間72万5000人もの人を殺しています,2位のヒトが47万5000人ですから,蚊は圧倒的に世界で最も恐ろしい生物と言えるのです,蚊が広げる病気はさまざま 蚊がヒトを殺害するのは病原体を介してです,つまり,ヒトが蚊に刺されたときに,蚊の体内にいる病原体がヒトの体内に侵入し,ヒトはその病原体により死に至るのです,本コラムで紹介してきたように,蚊が媒介する病原体が起こす病気には,マラリア(「蚊に殺された僕らのヒーロー」など参照),デング熱(「人ごとでないフィリピン『ワクチン不信』」と麻疹急増」など参照),チクングニア熱(「アフリカ生まれの新しい感染症,チクングニアにご用心」など参照),ジカ熱(「〈緊急企画〉ジカ熱拡大【後編】感染防止のカギと合併症」など参照),日本脳炎(「日本脳炎のワクチンが今必要なわけ」参照),黄熱(「野口英世の命を奪った黄熱のいま」参照)などがあります,地球温暖化が進行すれば蚊の生息範囲が広がり,次第に,北半球では北上,南半球では南下していきます,ジカ熱やデング熱のウイルスを運ぶヒトスジシマカ=国立感染症研究所提供 ではそれぞれの感染症の最近の動きをみていきましょう,マラリア まずはマラリアです,この病気は世界3大感染症の一つです,Our World in Dataによると,優れた治療薬のおかげで2000年以降減少傾向にあった世界のマラリアによる推定年間死亡者数は,19年に約55万8000人で底を打ち,再び上昇に転じています,その原因として考えられているのが「蚊の種類の変化」です, 世界保健機関(WHO)によると,マラリアを媒介する蚊で,従来はアジアの一部とアラビア半島にいたハマダラ蚊の一種(Anopheles stephensi,以下「ステフェンシ」)が,アフリカ諸国でも見つかるようになり
偽物ブランド すでに五つの国で確認されています,マラリアはもともとアフリカに多い感染症ですが,従来アフリカでマラリアを媒介していた蚊は,同じハマダラ蚊の中でも「ガンビエ」(Anopheles gambiae)と呼ばれる種です,これらは同じ仲間ですが,繁殖力がまるで異なります, アフリカに以前から生息していたガンビエは,きれいな水を好みます,したがって衛生環境がよくない都心部では,あまり数が増えません,ところが,新たにやってきたステフェンシは,スラム街の掘っ立て小屋付近の水たまりや,ゴミ捨て場,放置されたタイヤの中にたまった水など,ほとんどどんなところでも繁殖できます,さらに,ステフェンシは乾期の高温下でも生き残り,また殺虫剤に対する耐性もあるのです,これだけの条件がそろうと,ステフェンシは世界で最も恐ろしい蚊のなかで頂点を極めた最強の殺人鬼と呼べるかもしれません, 英紙「テレグラフ」によると,東アフリカの小国ジブチで初めてステフェンシが見つかったのが12年でした,その後,ステフェンシは急激に増え,それにつれてジブチのマラリアの感染者数は急増しました,12年には年間20人余りだったのが,20年には6万8000人となり,8年間で2800倍にも増えたのです,なお,ジブチの人口は21年で約110万人です, ジブチ以外でも,エチオピア,スーダン,ソマリア,ナイジェリアで同様の現象が報告されています,現在アフリカは急速に都市化が進んでおり,人口の40%がすでに都市に住んでいます,ということは,今後ますますステフェンシが猛威を振るい,マラリアが増加の一途をたどると予想されるのです,マラリア対策として,屋内の壁に蚊よけのスプレーを散布する担当者=ルワンダ東部ヌゴマ郡で2022年9月6日午後0時10分,五十嵐朋子撮影 テレグラフ紙の別の記事によると,世界中では21年に約61万9000人がマラリアで死亡しました,20年の62万5000人からはわずかに減少していますが,新型コロナウイルスが流行する前年,19年の56万8000人から比べると増加しています,(先ほどのOur World in Dataに掲載されている数字とは少しずれますが,テレグラフ紙の記事の数字をそのまま紹介しました)関連記事 <アジアで猛威のデング熱 温暖化で日本にも> <シニアを直撃する寒暖差 体温調節能力を高めて乗り切ろう!> <地球温暖化と共に進む子供の運動不足と体力低下> <暑さと大気汚染は相乗効果で死亡リスクを大きく上げる> <温暖化でマラリアやデング熱が数十億人の脅威に> 今後,地球温暖化の進行でステフェンシの生息地域が増えると
スーパーコピーバッグ マラリアによる死亡者数が大きく増えることになるでしょう,なお,マラリアはワクチンが開発されつつありますが,現時点では実用化されていません,特効薬はありますが,マラリアにかかると,あっという間に症状が進行して死亡しますから,診断の遅れや薬剤入手までの手間が命取りになります,ジカ熱 ジカ熱も問題です,最近は名前を聞く機会が減りましたが,この病気は,リオデジャネイロ五輪のあった16年に,中南米で流行し,WHOが緊急事態宣言を出しました, そのジカ熱を起こすジカウイルスが現在,インドで流行の兆しを見せています,22年12月14日には,同国の南部カルナタカ州に住む5歳の少女が感染したと報道されました,その半年前,22年6月に発表された論文によれば,現在ジカ熱はインド全域で「静かな広がり(silent spread)」をみせています,なお,21年の論文によると,50年までに世界で13億人もがジカ熱に感染すると推定されています,ジカ熱の致死率は高くありませんが,妊娠中の女性が感染すると小児の小頭症のリスクが生じ,成人の場合はギラン・バレー症候群と呼ばれる神経疾患を発症するおそれがあります,デング熱 デング熱も,地球温暖化の影響を受けて急激に増えています,日本では14年に東京・代々木公園などを中心に流行した感染症です,また本サイトでは,デング熱ワクチンの“失敗”でフィリピンの600人以上の小児が死亡した事件を繰り返し紹介してきました,(人ごとでないフィリピン「ワクチン不信」と麻疹急増) WHOによると,デング熱は現在,世界的流行をみせており,世界人口の約半分が危険にさらされています,デングウイルスに感染しても8割は軽症もしくは無症状ですが,毎年,推定で世界の1億~4億人が感染しています,報告された感染者数(つまり,それなりに重症になった人数)は,00年には50万5430人でしたが,10年には240万人以上,19年には520万人以上となり,20年足らずで10倍以上に増加しています,インド・ニューデリー市内に設置されたデング熱の予防を呼びかける広告,ヒンディー語で「デング熱を防ぐのは簡単,用心すれば自身や家族をデング熱から守れます」と書かれている=2015年11月13日午後2時48分,金子淳撮影 日本脳炎 日本脳炎は現在,インドのアッサム州で流行しています,テレグラフ紙の記事によると,昨年(22年)はインド全域で554人の患者が報告され,うち,アッサム州の患者が422人で大半を占めています,一昨年(21年)の同州内の感染者は218人ですから,ほぼ2倍に増えたことになります,しかも,同州では新型コロナウイルス流行のため,日本脳炎の患者数把握にも影響が出ており,正確な患者数をつかむのは難しいそうです,なお日本国内では,日本脳炎の患者は特に増えていません,しかし,西日本で飼われているブタのうち,日本脳炎ウイルスに対する抗体を持っているブタの割合が増えていることが注目されています
ブランド服コピー ブタが抗体を持つのは,日本脳炎ウイルスを持つ蚊に刺されたからだと考えられます,つまり抗体を持つブタの増加とは,言い換えると,ウイルスを持つ蚊の増加なのです, 先述したように,マラリアには治療薬がありますが,診断が遅れれば,あるいは薬をすぐに入手できない環境にいれば致命的になります,武田薬品が開発したデング熱の新しいワクチンは最近欧州やアジアで承認され,期待度はかなり高いのですが,世界中に普及するまでには時間がかかります,日本脳炎にはすぐれたワクチンがありますが,国によっては接種率が高くありません,ジカ熱とチクングニア熱にはワクチンがありません,デング熱,ジカ熱,チクングニア熱,日本脳炎,黄熱のいずれも特効薬はなく,感染すれば解熱剤くらいしか使えるものがありません,自分に寄ってくる蚊を捕獲して,周辺での蚊の生息数を調べる調査員=東京・新宿御苑で行われたデングウイルス感染蚊の駆除訓練で2019年9月2日,高木昭午撮影 では我々人類は地球温暖化を防ぐために何をすればいいのでしょうか,私見を述べれば,直ちにすべきは「戦争をやめること」です,戦争は尊い人命を奪うだけでなく,銃,戦車,戦闘機などが大量に製造され破壊され,森林を破壊します,もしも核が使われれば,小規模であっても大量のばい煙が大気中に放出され,植物が育たなくなります,結果として,地球温暖化が進行し,地球の寿命がさらに短くなります,この世界で戦争をするということは,まるで火のついた家の中で兄弟げんかをするようなものです, 現在の戦争が一日も早く終結し,新たな争いが生まれないことを祈りながら,本年最初の「実践!感染症講義」を締めくくりたいと思います, <医療プレミア・トップページはこちら> 関連記事 <アジアで猛威のデング熱 温暖化で日本にも> <シニアを直撃する寒暖差 体温調節能力を高めて乗り切ろう!> <地球温暖化と共に進む子供の運動不足と体力低下> <暑さと大気汚染は相乗効果で死亡リスクを大きく上げる> <温暖化でマラリアやデング熱が数十億人の脅威に> 投稿にはログインが必要です,谷口恭 フォロー 谷口医院院長 たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ,91年関西学院大学社会学部卒業,4年間の商社勤務を経た後,大阪市立大学医学部入学,研修医を終了後,タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事,同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け,帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属,その後現職,大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師,主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める,日本プライマリ・ケア連合学会指導医,日本医師会認定産業医,労働衛生コンサルタント,主な書籍に,「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社),「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)
新作ブランドコピー 「医学部六年間の真実」(エール出版社)など,谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中, 連載:総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- 前の記事 新型コロナ 「診たがらない医師」がいるのは制度や法律と別問題 次の記事 新型コロナで大きく変わった「風邪症状での受診のしかた」 注目コンテンツ