総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- フォロー 新型コロナ 「慎重派」と「軽視派」の対立は続く 谷口恭・谷口医院院長 2022年4月18日 保存保存 文字 印刷 マスクを着用して花見を楽しむ人たち,暖かい日はスギ花粉も多く飛散するという=東京都台東区の上野公園で2022年3月27日,前田梨里子撮影 先月,毎日新聞大阪本社で実施したミニ講演で,今後の新型コロナウイルス対策として私は「元気な若者は,コロナパーティー(新型コロナに感染したと分かっている人を,意図的に含めて開くパーティー)をしてもよい?」という“暴論”を述べました,「コロナパーティーに参加した若者が死亡」した事故は2020年の夏,米国テキサス州で起こりましたが,それから2年近くがたった今では状況が変わっています,今回は「今ならコロナパーティーができるのか」「やっぱりできないのか」を考えながら,現時点で,新型コロナに対する人々の考え方が大きく分かれている状況をみていきたいと思います,下がった新型コロナの死亡率 新型コロナが登場した20年初めと今では,この病気の危険性や社会の様子はかなりの部分で異なります,ワクチンが普及し,次いで流行株がオミクロン株に置き換わったおかげで,感染率(一定期間の感染者数/人口)は上昇したものの,死亡率(死亡者数/感染者数)は大きく下がりました,いまや,英国では新型コロナの方が季節性インフルエンザよりも死亡率が低くなった,という報道もあるほどです,大阪府のデータ(リンク先の21ページ)をみると,第6波の死亡率は,30代までなら0.00%,40代でも0.01%,50代でも0.05%で,しかもこれらはワクチン未接種者も入れての数字です,ここまで数字が低いのなら,健康でなおかつワクチン接種が済んでいれば恐れることはないようにみえます, そして「コロナパーティー」には利点があります,日ごろ健康で,感染しても軽く済みそうな若者であれば,ウイルスにさらされることにより,免疫がさらにパワーアップすることが期待できるからです,新型コロナは,ワクチン接種を受け終えた人にも感染しますが,感染した人が再びかかる「再感染」は少ないことが分かっています,世界の再感染の情報をまとめているオランダのニュースサイトBNO によると,新型コロナに再感染した事例は疑い例も含めて,昨年11月時点で104万人少々,死亡者は1400人弱しかいませんでした(当時の感染者数は全世界合計で2億6000万人あまりでしたから,再感染者は,感染者全体の250人に1人くらいです,ただし,このサイトはその後,更新が止まっています),世界中のすべての再感染の情報が反映されているのか,という疑問はありますが,死亡者数はそれなりに正確だと思われます,確定例(新型コロナに再感染して死亡したことが確実な例)は世界中でわずか3例のみです,「終りは程遠い」と国連 2回目に感染してもほとんど重症化することがないのであれば,自身の免疫をパワーアップさせるために病原体に接するという考えは理にかなっています, ただし,この考え方には「絶対に高齢者や基礎疾患がある人に近づかない」という条件がつきます, ですから,高齢者や基礎疾患を持つハイリスク者に絶対に接しない環境にいる人だけが集まるのならコロナパーティーが開催できますが,実際にはハイリスク者と同居している人や,職場で接するという人も多いでしょうから,社会全体でコロナパーティーを広げていくことはできません,つまり,社会全体でみれば「コロナはまだ終わっていない」のです, 国連は今年3月9日,「2年経過したが,新型コロナの世界的大流行は終わりからはほど遠い」というタイトルの記事を,自らのウェブサイトに掲載しました,「感染者も死亡者も世界的に減少し,規制を緩める国が増えているが,パンデミック(世界的大流行)は終わりからはほど遠い,世界のすべての地域で終焉(しゅうえん)するまでは,『終わった』といえる地域はどこにもない」という世界保健機関(WHO)のテドロス議長の言葉が紹介されています,ちなみに,この記事の先頭にはマスクを着けた人々が通りを行き交う,大きな写真が掲載されています,どこの国かと思って,写真説明を確かめると日本でした,人によって分かれる行動方針 本連載で繰り返しているように
ブランド財布コピー 新型コロナはほとんどの若者にとっては「ただの風邪」,他方ハイリスク者にとっては「死に至る病」です,そして,もう一つ厄介な新型コロナの特徴が「無症状でも他人に感染させる」という事実です, では,この複雑な二つの特徴を持つ新型コロナが社会に長期間持続した結果,何が起こるでしょうか,それは「人々の分断」です,「〇〇の状況のとき,あなたならどうしますか」という命題は今後,いろんなところで議論になるに違いありません, 英紙「テレグラフ」の記事は,このテーマで興味深い状況を設定し,考えられる行動をいくつか挙げて「あなたはどの行動を選びますか」と問いかけています,ここでいくつかの例を紹介しましょう,関連記事 <新型コロナ 「まともな」かかりつけ医を持とう 谷口医師講演> <米国男女の出会いはネットが主流 新型コロナでさらに弾み> <新型コロナ 「感染+基礎疾患」で死なないために> <新型コロナ 米国が進む「風土病化」へのでこぼこ道> <新型コロナ 大流行の「出口」を目指して> ◆朝起きると,風邪症状がある,新型コロナかもしれないが,たいして重い症状ではない,仕事に行くか? A 行かない,同僚に悪い
ブランド時計コピー 今週は休むことにし,体調がよければリモートワークにする,上司が文句を言わないことを祈る, B マスクをして検査キットを買いに行く,検査して陽性なら,上司が何と言おうと検査で陰性になるまで出勤しない,陰性なら仕事に行く, C 出勤する,ただの風邪に違いない,やるべき仕事はあるし(新型コロナかも,と言っても)上司は信じないだろう,事実上,他に選択肢はない, ◆土曜日に友達を集めてパーティーを開く予定だ,だが3日後の火曜日には就職活動の面接がある, A 友達が,400円ほどの料金を自己負担して抗原検査キットを買い,自主的に検査を受けてくれることを望む, B 自分でお金を出して抗原検査キットを買い,友達に受けてもらう, C そんなお金があるなら友達にカクテルをおごる,心配なら,パーティーは面接後に延期する
コピー時計 N級品 成人式に参加する前に,車内で抗原検査をする新成人=山梨県北杜市で2022年1月8日午後0時14分,駒木智一撮影 ◆サッカーの全国大会の決勝戦のチケットがありグループで観戦予定,同行予定者の1人が新型コロナ陽性だと分かったが
コピーブランド財布 本人は予定通り行くという,観戦は屋外だし,同行する予定の全員が3回のワクチン接種を済ませているから問題ないと言うが……, A 行くのもよいとは思うが,陽性になった人だけで決めず,同行予定者全員の投票にしてはどうか, B とんでもない,ボールが飛んできて陽性者のつばがつき,そのボールから英国代表入りするような選手に新型コロナがうつるかもしれない, C OK,何の問題もない,トラファルガー広場に設けられたパブリックビューイング会場で欧州選手権のイングランド戦を観戦するサポーター=ロンドンで2021年7月3日,横山三加子撮影 ◆あなたは週末に結婚式を挙げる予定だ,だが自分は新型コロナ陽性だと判明した,式をキャンセルするなら招待客180人に知らせる必要があるし,莫大(ばくだい)なキャンセル料を請求される,婚約者は激怒するだろう……, A 式を挙げる,ただしマスクを着ける,招待客には陽性であることを伝えて謝罪する,B キャンセルする,「世界的大流行は終った」という公式な宣言が出てから式を挙げる,2056年に,C 予定通り,週末に式を挙げる,招待客に新型コロナ陽性を伝える必要はない, ほとんどの人は迷って手探り 日本と英国では文化や慣習が異なりますから,日本人には想像しにくいシーンもありますが,選択肢の特徴としては,Aが中庸派,Bが慎重派,Cが軽視派――の意見ということになります,実際には,その人の置かれた環境によるでしょうし(リモートワークができない職種もある),重症度が高い株が再び流行すれば変わるでしょうから,単純に回答するのは難しいでしょう, この記事の執筆者も「ほとんどの人は,AからCまでどれを選ぶこともあり,何が正しいのか手探りを続けていて,毎週のように考えが変わるのだろう」というような文言でまとめているのですが,よく読むと「結婚式直前」の選択肢Bでは,最後に「2056年に」と皮肉を込めています,コロナを怖がりすぎると何もできない,と言いたいのでしょう,また,Cばかりを選択する人については「誰だって自分が大事だ」というような言い方をしています, これらの選択肢を改めて振り返ると,Bばかり選んでいては生活が前に進まないわけで(結婚式が56年までできない),Cばかり選んでいては他人とぶつかるのは必至です,ということは,Bを選ぶ人(慎重派)とCを選択する人(軽視派)が一緒の職場,学校,あるいは同居する家族内にいれば衝突が絶えないことになります, 結局のところ,識者から市井の人まで,あるいは子供から高齢者まで,多くの人たちのいがみあいをもたらしたのが新型コロナウイルスです
ブランドバッグコピー 登場初期の,誰にとっても死に至るかもしれない恐怖の病だった頃から,大勢の人にとってただの風邪と変わらない状態になった今でも,依然として「人間を分断させるウイルス」であり続けているのです,直径わずか1万分の1ミリメートルの,光学顕微鏡では見えない小さな病原体のせいで,我々人間が憎しみあい,ときには殺人事件(マスクをするよう注意して刺される,撃たれるなど)まで起こっているのです,「他人はなぜそう考えるのか」の理解を ではどうすればいいのでしょうか,冒頭の先月開催した私の講演でも述べたように,まずは人間関係の基本である「自分を理解してもらう前に相手を理解する」ことが大切です, コロナに関することで,自分と異なる意見の人に出会ったときは「この人,私と合わないから関わらないようにしよう」と思うのではなく,「この人からは私にとって新鮮な意見が聞けるかもしれない!」と考えるのです,そして,自分の意見を主張するのではなく,まずその人がなぜそのように考えるのかを理解するように努め,その人に「私はあなたのことを理解しています」と理解してもらうまでは自分の意見を言わないようにするのです, そんな面倒くさいこと……と感じる人もいるでしょうが,これは私自身が日々の診察で心がけていることでもあります,少々時間はかかりますが,まず「なぜこの患者さんはそのように考えているのか」を理解することに専念します,医学的な視点,つまり我々の見方からは合理的でないことを言う人もいますが,それでもそのような考えに至るには,その人にとっての“ドラマ”や“ストーリー”があるはずです,そのドラマやストーリーを理解することなしには診察が始まらない,というのが私の考えです, 特記のない写真はゲッティ<医療プレミア・トップページはこちら> 関連記事 <新型コロナ 「まともな」かかりつけ医を持とう 谷口医師講演> <米国男女の出会いはネットが主流 新型コロナでさらに弾み> <新型コロナ 「感染+基礎疾患」で死なないために> <新型コロナ 米国が進む「風土病化」へのでこぼこ道> <新型コロナ 大流行の「出口」を目指して> 投稿にはログインが必要です,谷口恭 フォロー 谷口医院院長 たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ,91年関西学院大学社会学部卒業,4年間の商社勤務を経た後,大阪市立大学医学部入学,研修医を終了後,タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事,同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け,帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属,その後現職,大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師,主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める,日本プライマリ・ケア連合学会指導医,日本医師会認定産業医,労働衛生コンサルタント,主な書籍に,「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社),「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社),「医学部六年間の真実」(エール出版社)など,谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中, 連載:総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- 前の記事 新型コロナ 「第6波」後でも日本の死者が欧米より少ない理由 次の記事 新型コロナ 届出や健康観察を「診療所が」行う大阪の新体制 注目コンテンツ