総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- フォロー 新型コロナ ブラジルで再び流行した理由 谷口恭・谷口医院院長 2021年3月15日 保存保存 文字 印刷 ブラジル・マナウス市の風景,市内には日本の総領事館や日本人学校があり,日系企業が進出し,日系人も多く住む=ゲッティ 過去のコラム「新型コロナ ブラジルでの“集団免疫”とその代償」で,ブラジルのアマゾナス州の州都マナウスでは,昨年秋の時点で,新型コロナウイルスの推定感染率,つまり,新型コロナに対する抗体を持つ住民の割合が66%にも上ったという話をしました,マナウスで何が起こったかについて二つの重要な点を述べました,一つは,いわゆる「集団免疫」ができるまでもう一歩,あるいはすでにできたかもしれない,ということです,なお集団免疫とは,感染者が持つウイルスが他人を攻撃しても,攻撃相手の大半が免疫を持っていて新たな感染が起きにくく,感染が大きくは広がらない状態をいいます, 一般に,その地域での抗体陽性率(抗体は,感染するかワクチン接種を受けるとできます)が7割(4~6割という説もあります)を超えれば,集団免疫が成立し,その後は感染が広がらないであろうと考えられています,マナウスは昨年秋の時点で,その集団免疫をほぼ達成しつつあったと思われていました, マナウスで起こったもう一つの重要なことは,そこにたどり着くまでに大勢の犠牲者を生み出したということです,昨年秋の時点で,マナウスの新型コロナウイルスによる死亡者は4000人近くにも上り,人口が約218万人ですから,100万人あたりの死亡者は2000人近くにもなりました,しかも,マナウスは60歳以上の人口がわずか6%の若者の街なのです, 集団免疫ができつつある(あるいはできた)としても,大勢の犠牲者を出したわけですから「成功」とは言えず,まして高齢者が多い先進国でこの地域のまねをすることはできません,おそらく「マナウスに倣ってみんなで感染しよう」などというようなことを言う識者は(ほぼ)皆無です, さて,多くの犠牲者を出したとしても,その後新型コロナを克服したのだとすれば亡くなられた方も報われるかもしれません,新型コロナを恐れなくてもいい社会を迎えられるのですから,既感染者7割超でも1月にロックダウン では実際はどうなのでしょうか,医学誌「The Lancet」2021年2月6日号にその後のマナウスの実情が報告されています,論文のタイトルは「既感染率が高いにもかかわらず
ブランドコピー 安全なサイト マナウスで新型コロナが再びまん延(Resurgence of COVID-19 in Manaus, Brazil, despite high seroprevalence)」です, 論文によれば,マナウスでの血清抗体陽性率は20年10月の時点で76%に達し,すでに集団免疫が獲得できたと考えられていました,この地域での感染者のピークは4月で,5月から11月までは新規感染者は減少傾向にありました,7月にはフィジカルディスタンシング(社会的距離の確保)を緩和し,年末には一部の娯楽施設を再オープンさせています,ところが,21年1月1~19日には,入院患者数がこの19日間で3431人と,20年12月1~19日の552人に比べて6倍以上にも増え,ロックダウンに踏み切らざるを得なくなりました,マナウス市の新型コロナ感染者の推移,細い赤線は1日の入院患者数,太い赤線はその7日間平均を示す,また細い青線は,1日の新型コロナによる過剰死亡数(統計的に,過去の年と比べて多く死亡している人数),太い青線はその7日間平均を示す=本文で紹介した「The Lancet」の論文から,英語を日本語に翻訳するなどして作成 では,集団免疫が獲得されたはずのマナウスで再び大流行が起こったのはなぜなのでしょうか,論文の著者は①抗体陽性率7割以上という数字が誤っていた(この数字は主に献血者のデータから推測されています)②4月ごろに起こった最初のピークから時間がたったために獲得された免疫が衰退していた③新型コロナウイルスの変異株が登場し,過去にできた免疫では対処できなくなった④変異株は過去に流行したタイプよりも強い感染性を持つ(1人の感染者が持つウイルスが多くの他人を攻撃するため,攻撃対象の76%が免疫を持っていても,免疫のない残り24%の人への感染だけで流行が拡大してしまう)――と四つの可能性を推測しています,再流行の理由で変わる将来の見通し ①の「数字の誤り」であれば,まだ未来に希望が持てます,従来言われてきたように,ワクチンで集団免疫を高めればウイルスを克服できることが期待できるからです,では,原因が①でなかったとき,つまり見積もられた抗体陽性率が正しかった場合はどうなるのでしょうか, ②が正しければ,いったん感染しても免疫はさほど長期間維持されず,多くの人が1年以内に再感染の危険にさらされることになります,感染してできる免疫とワクチンを打って獲得する免疫は性質が異なることがあり,ワクチンなら長期間免疫が維持できる可能性もなくはありませんが,一般には感染して得られる免疫の方が長い期間持続すると言えます,たとえば麻疹や風疹は一度感染すると生涯,免疫が維持されることが期待できますが,麻疹ワクチンや風疹ワクチンでついた免疫は,効果が弱まることもあります,関連記事 <新型コロナ 「集団免疫獲得の街」で起きた医療崩壊> <新型コロナ「集団免疫獲得の街」を歩く> <新型コロナ 子供のマスクは「努力目標」で> <新型コロナ 「第3波」後の見通しは> つまり,②が正しければ,年に1度のワクチンでは不十分だということになります,この場合,国民の大多数が年に1度を超える頻度でワクチン接種を受ける必要が出てきますが,これがかなり大変なことは想像に難くありません, では,効率的なシステムが開発され,さらにワクチンの安全性が確立され,「国民の大多数が年に1度を超えるワクチン接種を受ける」ことが可能になったとしましょう,それでも問題は残ります,それが③と④です,「ブラジル型」変異株の性質は 変異株についてはすでに数カ月前から話題になっています,現時点で分かっていることをまとめておきましょう
ブランド通販 重要視されている変異株は三つあり,ここではそれぞれを英国型,南アフリカ型,ブラジル型と呼ぶこととします,いずれも従来型よりも感染力が強いことは間違いなく,南ア型は既存のワクチンが効きにくいこともわかってきています,重症化についてはまだはっきりとしておらず,英国型と南ア型については従来型よりも重症化することが明らかになったわけではありません, ところが,ブラジル型が流行したマナウスでは,ロックダウンを回避できず,入院患者が急増しました,入院患者=重症者とは必ずしも言えないかもしれませんが,やはりこれだけ急激に入院患者が増えていることは入院が必要な重症者が増えていることを示していると考えていいでしょう,そして,感染力も従来型と比べて2倍以上という報告もあります,英国の新聞「The Telegraph」の記事によれば「感染力は従来型より1.4~2.2倍」「過去に感染して免疫を持っている人のうち25~61%は,その免疫ではブラジル型による感染を防げない」という推測があるそうです
偽ブランド 公立デルフィーナ・アジズ病院でベッドに横になる新型コロナウイルス感染症の患者=ブラジル北部マナウスで2020年10月29日,山本太一撮影 英国当局はブラジル型を非常に警戒しており,感染者の追跡を徹底しています,しかし,2月末にブラジル型感染が判明した6人のうち1人の連絡先が分からなくなっていました,The Telegraphは,その人物の住所がイングランド南東部の379世帯に絞り込まれたことを報道しました,そして,同記事はこの感染者のことを「患者X」と呼んでいます, ブラジル型についてまとめると,過去に従来型に感染していても感染することが多い▽感染力は従来型の約2倍▽重症性はおそらく従来型よりも高い▽(既感染者も感染するとみられることから)ワクチンは効果が乏しい可能性が高い――となります, ところでブラジル型はすでに日本でも感染者が見つかっています,このうち,1月にみつかった4人はやはりマナウスからの帰国者で,詳細は国立感染症研究所が報告しています,その後もブラジル型の感染者は出ていますが
激安 ブランドコピー 国内で大きく広がるという状況ではなく,英国のように「患者X」などと呼ばれてもいません,※編集部注 埼玉県によると,同県ではブラジル型のウイルスに感染した可能性のある患者が,厚労省の発表とは別に18人います,実際に感染していたかどうかは検査中で,確定していないそうです,楽観できない状況 我が国でもワクチン接種が始まりました,国内での効果が実証されたわけではありませんが,安全性を大きく脅かすような事態は起こっておらず(接種後にくも膜下出血で死亡した女性医療者の報告はあります),新型コロナウイルスはもう怖くないというムードが広がりつつあります,ですが,もしもブラジル型が国内で猛威をふるい,感染者が「患者X」などと呼ばれるような事態となれば大変なことになります,また,ブラジルからの帰国者・入国者が差別されないかも心配です, 何かと物議をかもしている東京オリンピックも実施される見込みだと聞いています,しかし,楽観するのはまだ早すぎます, <医療プレミア・トップページはこちら> 関連記事 <新型コロナ 「集団免疫獲得の街」で起きた医療崩壊> <新型コロナ「集団免疫獲得の街」を歩く> <新型コロナ 子供のマスクは「努力目標」で> <新型コロナ 「第3波」後の見通しは> 投稿にはログインが必要です,谷口恭 フォロー 谷口医院院長 たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ,91年関西学院大学社会学部卒業,4年間の商社勤務を経た後,大阪市立大学医学部入学,研修医を終了後,タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事,同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け,帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属,その後現職,大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師,主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める,日本プライマリ・ケア連合学会指導医,日本医師会認定産業医,労働衛生コンサルタント,主な書籍に,「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社),「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)
スーパーコピー通販 「医学部六年間の真実」(エール出版社)など,谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中, 連載:総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- 前の記事 新型コロナ 子供のマスクは「努力目標」で 次の記事 新型コロナ ワクチン接種でマスクは外せる?注目コンテンツ