総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- フォロー 新型コロナ 基本に背いても検査を増やすべき理由 谷口恭・谷口医院院長 2021年2月15日 保存保存 文字 印刷 本連載で繰り返し述べているように,新型コロナウイルス感染症をどの程度重大な疾患とみるかについては医師の間でも意見が分かれます,「若者にとっても大変な脅威」と考えロックダウンなど積極的な施策を推薦する医師がいる一方で,「ただの風邪」とみなし,前回のコラム「新型コロナ 法的に『インフル並み』の扱いは無理」で述べたように,感染症法上の分類を,インフルエンザ並みの「5類」に格下げすること望む医師もいます, 検査についても医師の間で意見が分かれます,新型コロナの検査にはPCR検査,抗原検査
スーパーコピー靴 抗体検査があります,今回取り上げるのはPCRで,新型コロナが国内で流行しだした2020年2月から,「誰に検査をすべきか」「検査の対象を広げるべきか」についてさまざまな意見が飛びかっていて,現在も医師間で意見がまとまっていません,今回は,なぜ医師の間で意見が分かれるのかについて私見を交えながら説明していきます,まずは,この1年間の経緯を振り返ってみましょう,「検査だけ」できる場所は増えたが ・20年2~3月:新型コロナの流行が始まり,PCRが行われるようになりましたが,対象は保健所が認めた重症例だけでした,この頃は,検査可能な人数に限りがあったために
偽物時計 「重症例のみ」という政策に誰もが賛同せざるを得ませんでした, ・4~5月:感染者や,感染が疑われる人が増えました,しかし保健所管轄の検査数は依然少なく,医師が「この患者はPCR検査が必要です!」と保健所に強く訴えても検査が受けられない事例が増加の一途をたどりました,しつこく保健所に食い下がっても認められず後に陽性が判明した事例については過去のコラム「新型コロナ 過剰な検査制限『高熱10日でもダメ』」で紹介しました,ドライブスルーまたはウオークスルー形式の無料検査が始まりましたが,規模が小さく,地域によっては「検査を受けたいけれど受けられない」という人が増えていきました, ・6~8月ごろ:民間の検査会社がPCRを請け負うようになり,検査可能な人数は一気に増えました,ただし公費で検査ができるかどうかは地域で偏りが生じました,東京などはこの頃から,医療機関で個人負担ゼロで検査が受けられるようになりましたが,大阪では10月まで待たねばなりませんでした,私が院長を務める太融寺町谷口医院(以下,谷口医院)は,「PCRを受けなければインドネシアで生き別れた夫に会えない!」との訴えを受けた事例(参照:「新型コロナ 検査が受けられず他国に行けない」)をきっかけに,渡航者向けのPCR検査を6月上旬より開始しました,全体としては「検査を受けたいけれど受けられない」という人は依然少なくありませんでした, ・9月ごろ~現在:美容系クリニックなどが格安PCR検査を手掛けるようになり,郵送での検査が普及し始めました,さらに一部の検査会社が独自に検査を担うようになり,駅前には大手ハウスメーカーのグループ企業が設立した極めて低額のPCR検査場が登場しました,郵送検査を担う会社も増え,なかには陽性でも届け出をしないことを売りにして「こっそり検査」などとうたう業者も登場しました(参照:「新型コロナ 自己検査PCR『安易に受けないで』」),「検査を受けたいけれど受けられない」という人は全体では減りましたが,「きちんとした医療機関で検査を受けたいけれど受けられない」という人は今も少なくありません, 谷口医院では発熱などの症状があり新型コロナを疑う人には「発熱外来」の枠で受診してもらっていますが,1日数人しか診られないため,対象を「谷口医院をかかりつけ医にしている人のみ」に限定しています,1人受診するとその後の消毒処置等にかなりの時間がかかるのです,かかりつけ医でない場合も渡航を控えた方であれば検査を承ることがありますが,そのほかの未受診の人は症状の有無に関わらず断らざるをえません,今も毎日たくさんの方からの依頼を断っているのが実情です,検査増に反対する医師も 需要がそれだけあるんだから海外のようにどんどんPCR検査をすればいいではないか,という意見をよく耳にします,ですが,こういう意見に反対する医師は少なくありません,なぜでしょうか,私自身は,新型コロナについては「検査を増やすべきだ」と考えていますが,別の病気なら「増やすべきではない」と主張します,新型コロナの検査は“例外的に”増やすべきだと考えているのです,この理由は後述するとして,まず「検査対象を広げるべきではない」とする意見の根拠を,数字を挙げて述べていきます,その根拠とは,簡単に言うと「対象を広げると無駄に隔離される人が増える」というものです, 東京都を例にとって考えてみましょう,都の人口は約1400万人です,そのうち,ある1日に新型コロナに感染している人を3万人と仮定します(今年1月末ごろだと,都内で見つかる新規感染者は1日あたり約1000人でした,これに加え,昨日見つかった人も,今日検査をすれば陽性になります,10日前に感染した人までは陽性になると考えると,この時点で計1万人となります,また,感染していても検査を受けない人が相当数いるでしょうから,実際には2倍以上になるでしょう,さらに「感染しているのだけれど結果が陰性と出る」人もいますから,ここでは,ある1日の感染者の総数を3万人と仮定します), 次に,PCRの感度(感染している人を正しく陽性と判定する確率)を70%とします(私自身はもう少し高いような印象があるのですが,一般に新型コロナのPCR検査の感度は70%とされています),関連記事 <新型コロナ 感染症を診る病院は「もっと検査を」 > <新型コロナ 検査希望者を褒めたたえよう> <新型コロナ 社会の要請に応えてPCR検査増を> <新型コロナ 家にウイルスを持ち込まない方法> そして最後に,PCRの特異度(感染していない人を正しく陰性と判定する確率)を99%としましょう(末尾の注で説明しますが,この数字には異論もあります), さて,上記のような仮定の下で,東京都民全員に検査をすると,何が起こるかを試算してみます,仮に1400万人全員に検査ができたとしましょう,すると,陽性となるのはまず,感染者3万人の70%で,2万1000人です,残り9000人(3万人引く2万1000人)は偽陰性(本当は感染しているのに検査結果は陰性と出る)になります, 一方,感染していない東京都民は1397万人(1400万人引く3万人)です,このうちの99%,つまり1383万300人は,検査で正しく「陰性」と出ます,残り1%,つまり,1397万人✕1%=13万9700人は,偽陽性(本当は感染していないのに陽性と出る)となります, ここまでをまとめると,検査で陽性となったのは,実際に感染している2万1000人と,実際は感染していない「偽陽性」の13万9700人で,合計して16万700人です,なお検査結果からは,この16万人あまりのうち,だれが本当に感染していて,だれは感染していないかの区別はつきません, ということは,「陽性と出た人のうち,実際に感染している人の割合(陽性的中率)」は,2万1000÷16万700=約13%となります,要するに,もしも東京都民全員が一斉に検査を受けた場合,「陽性の結果が出た人を100人集めると,本当に感染しているのはわずか13人しかいない」となるのです,「100人中87人は無駄な隔離を強いられるではないか」というわけです,※注 「やみくもな検査」はしないのが基本 たしかにこの考えは,診断学という学問の観点からみると間違っていません,谷口医院が開院以来「検査はいつも最小限」と言い続けている理由の一つがここにあります, 例えば,「無駄に行われる検査」の代表ともいえるものに,腫瘍マーカーの検査があります,この検査は,本来はがんの進展度や抗がん剤の効果,再発の可能性を検討するときに実施すべきものですが,いまだに健診や人間ドックで行われていることがあります, 無症状者に対してがんの有無を調べる目的で行う腫瘍マーカー検査は(その種類にもよりますが)感度・特異度ともにかなり低いもので,検査をすれば偽陽性や偽陰性が多数起こり得ます,がんになっていても見逃されますし,がんではないのに陽性と出て無駄な追加検査を強いられ,CT(コンピューター断層撮影)やPET(陽電子放射断層撮影)による無駄な放射線被ばくをすることになります,一般に「無症状者への検査はやみくもに増やすべきでない」が,診断学の基本です(これを「検査前確率を上げる」と言います,病気にかかっていそうな人をある程度見定めてから検査をしなさい,ということです),新型コロナは話が別 しかし,私は新型コロナに関しては「無症状者にも検査をすべきだ」という考えを持っています,その理由は二つあります, 一つは「無症状者からの感染が少なくない」ことです
スーパーコピーn級 医学誌「JAMA」に最近掲載された論文「無症状者からの新型コロナウイルス感染」によれば5割以上が無症状者から感染しています,ならば,感染者との濃厚接触以外に「濃厚接触かもしれない」という人を検査対象に加えるべきです, もちろんこの「線引き」は簡単ではありません,そもそも濃厚接触の定義があいまいです,一応は「マスクなしで,かつ感染者から1m以内で,かつ15分以上の接触」ということになっていますが,「マスクなし,10cm,14分」や「マスクなし,101cm,2時間」という極端な条件なら感染する人もいるでしょうし,マスクを正しく装着していたのか,という問題も出てきます,「それが濃厚接触だったかどうか」の判定は実際には困難です,だとすれば,「濃厚接触の可能性がある」のなら検査をするのが現実的です(なお,このやり方は先ほど試算した「都民全員の検査」とはかなり異なります,「濃厚接触の可能性があった人」に絞って検査するので,「全員検査」に比べ,無駄な隔離は大きく減少します)
時計コピー 私が無症状者にも検査をすべきだと考えるもう一つの理由は「陰性証明を求められるから」です,PCRによる新型コロナ感染の陰性証明がないと飛行機に乗れない(渡航先が受け入れない)のですから,検査する以外に選択肢はありません,国内でも「取引先から求められている」という理由で検査を希望する人がいます,その取引先の規則の是非は別にして,現実的にはこういうケースでは検査をするしかありません,ただし,本来は陰性証明は不要なものであり厚労省も見解を発表しています,新型コロナウイルスの緊急事態宣言が続く中,マスク姿で横断歩道を渡る人たち=東京・銀座で2021年2月5日,丸山博撮影 隔離された人をいたわる社会を 検査数を増やせば増加する偽陽性の問題については個別に対応できると思います,検査をやり直す以外にも,まったくの無症状であれば数日間の自宅待機で済ませることも検討できるでしょう,また,「偽陽性でも隔離されることがありうる」ということを徹底的に周知させ,誰もがそれを理解し,感染の有無に関わらず隔離された人をいたわる社会にするよう努めればいいのです, 問題は費用負担です
偽ブランド 格安検査が普及してきましたが,医療者を介さない検査で精度は担保されるのでしょうか,濃厚接触があったかもしれない無症状者にはドライブスルーやウオークスルーで無料のPCRを受けられるようにすべきではないでしょうか,もちろん,症状があるときには誰もが速やかに医療機関の「発熱外来」で無料検査を受けられるような体制を構築せねばなりません, ※注 ただし,この試算結果はやや極端かもしれません,たとえば,特異度は99.99%以上だという意見もあり,この数字を使うと,偽陽性の13万9700人は一気に100分の1に減って1397人になります,この場合,陽性的中率は約93.8%となり,「無駄な隔離」は100人中6人ほどです,一方で,試算には含めませんでしたが,気づかないうちに感染した後,回復中で体にウイルスの残骸が残っている人も「陽性」になって「無駄な隔離」をされる可能性があります,ここでは数字にこだわらず「検査を幅広く行うほど無駄な隔離が増える」ことを理解していただければと思います, <お知らせ> 2月18日18時半より「第3回ミニ講演会」を行います,今回は会場とウェブのハイブリッド形式となります, 特記のない写真はゲッティ<医療プレミア・トップページはこちら> 関連記事 <新型コロナ 感染症を診る病院は「もっと検査を」 > <新型コロナ 検査希望者を褒めたたえよう> <新型コロナ 社会の要請に応えてPCR検査増を> <新型コロナ 家にウイルスを持ち込まない方法> 投稿にはログインが必要です,谷口恭 フォロー 谷口医院院長 たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ,91年関西学院大学社会学部卒業,4年間の商社勤務を経た後,大阪市立大学医学部入学,研修医を終了後,タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事,同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け,帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属,その後現職,大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師,主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める,日本プライマリ・ケア連合学会指導医,日本医師会認定産業医,労働衛生コンサルタント,主な書籍に,「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社),「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社),「医学部六年間の真実」(エール出版社)など,谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中, 連載:総合診療医の視点 -命を救う5分の知識- 前の記事 新型コロナ 「インフル並み」の扱いは困難 次の記事 新型コロナ 「ワクチンの是非 自ら考える」 谷口恭氏講演会 注目コンテンツ